その時、後ろの席の方からブザー音が響いた。


次のバス停に向けて走っていたバスは、

そのブザー音に反応して、急にスピードを落として止まる。



そして、バスが完全に止まると、

あたしの後ろから、見慣れない制服を着た女の子が出口へ向かって歩いて来た。


その女の子は、あたしたちの横を通り過ぎるとき、

ちらっとこちらを見た。


あたしは、その女の子を見て、驚きの声を上げた。



「苑ちゃん……!」



……苑ちゃん。

それは、ホントに何年ぶりかに会ったあたしの友達で……


……徹先輩の妹だった。




苑ちゃんは、あたしとソラの顔を何度も見た後、

その視線をあたしの膝の上に置かれた手に移した。



そして。



何も言わずに、そのままバスを降りていった。