「……ソラ?」


だけど、ソラは窓の外を眺める姿勢を変えようとはしなかった。

ソラがどんな表情をしているのか、あたしからはよく見えない。



ソラは、あたしの手を掴んだままのその手を、

ゆっくりとあたしの膝の上に置いた。


「ねえ、ソラ……降りないの?」

「降りたかったら、この手をふりほどいて降りたら?」


ぶっきらぼうなその言葉とは裏腹に、ソラは、繋いだその手に力を加えた。

そして、あたしの指と指の間に、一本ずつ、自分の指を絡ませていく……



バスは、あたしたちが降りるべきバス停を、スピードを落とさないままに通過していった。


あたしは、そんな窓の外の景色を眺めながら、

ほんの少しだけ、


ぎゅっと、ソラの手を握り返した。