「じゃあな。」


王子様は片手を挙げて後ろへ翻す



『待って!』なんて、
とっさに呼び止める勇気は私にはなかった。


名残惜しく私もきびすを返した。



もう会うことはないだろう、とても短い恋だった…


肩を落とす私の後ろ姿を振り向いた彼が見ているとは知らない私。





ガチャッ



「おぉ、若菜!」


「びっくりしたぁー…克哉兄さん驚かさないでよ。」


目の前でいきなりドアが開き、克哉兄さんが顔を出した。


「打ち合わせは終わった。これから現場行くか?
あと…ほれ、忘れものとプレゼント。」


私の手に置かれたものは、エンドレスラブの原作と、映画の台本だった。



「…うん!!撮影現場見たい!」


「そうこなくっちゃ!『原作者』が見ないのはおかしいもんな。」










「…どういうことですか?」