トイレに到着した私は、

恥ずかしさをこらえながら一目散に中へ駆け込んだ。



スッキリした私は手を洗いながら、

案内してくれた男性にお礼を言うのを忘れていたことに気づいた。


顔も、名前も知らない。


わかってるのは服装とあの声。



ああ…また会えないかな。


そう考えながら廊下へ出ると、



「…あっ!」



彼が、いた。


もしかして、待っててくれたの…?




「どうせ帰り道もわかんないんだろ?」


そう言いながらふと私の方へと顔が向けられる。



彼が、優しく微笑んだ。




「………っ」



一瞬で、あなたを好きになった。