「あの!
トイレはどこですか!!」



『いきなり何言ってんだコイツ』とか思われても良かった。

…けど、やっぱり恥ずかしかった私はうつむきながら叫んでしまった。



「あー…、ついておいで。」


!!!


返ってきた言葉は予想外だった。

さげすんだり、バカにしたりするような言葉じゃない。


しかも道順を教えるのではなく
『ついておいで』って!!

まるで私が方向オンチだと知っているかのようだ。


そして…、

なんだ、この甘い声、優しい声色。


どこか懐かしい気持ちになった。


バッと顔を上げると、すでにその男性は私に背中を見せて歩きだす。


顔も見てないのに、私は一瞬にして彼にときめいてしまった。