「アン、そろそろ日が落ちてきた。シルキーの元へ急ごう。」


「そうねヨセフ。シルキーはどこかしら。」



アンとヨセフは森を南へと進んでいた。


道なき道をひたすら南へ。


アンはおうちに帰る事なんかすっかり忘れていた。


ヨセフとの冒険があまりにも楽しくて、


変わり者の娘を持ってしまったと言ってときどきご飯もくれないお父さんとお母さんの事なんて忘れてしまっていた。



「ねぇヨセフ。シルキーってどんな妖精?」


「女の妖精だよ。とてもきれいなんだ。ときどき人間を誘惑する。」


「妖精なのに、人間を誘惑するわけ?」


「妖精にとってはイタズラだよ。」


「ヨセフ、なんでそんなに知ってるの?」


「アンは質問が好きだな。」




ヨセフはクスッと笑った。


空色の瞳が輝く。



アンはふと、行方不明のこの国の王子様の話を思い出した。