☆〈翔〉☆



―「香坂 沙門って知ってる…?」―


―「さぁ…誰だっけ?」―




あのたった一言で、オレは気分が晴れた。


自分でも驚くほどオレは単純だったらしい。




「ジュニアー!今日の夕飯なに?」


「…イクラ。エリックだけ。」


「おいおいちょっと!なんで私だけピンポイントで嫌がらせなんだ?」


「Oh!sorry,My Engrishisn't good enough!So,You like salmon roe,don't you?」

(あぁ!ごめん。オレの英語は不完全なんだ。だから、エリックはイクラ好きだったよね?)




オレがそう言うと、エリックはおでこに手を当てて大袈裟に天井をふりあおいだ。


なんか、「おぉ…神よ…」とかつぶやいている。

あんた無宗教だろうが。


エリックはイクラが大っ嫌いだ。


あのプチプチした感覚がたまらなく嫌らしい。


美味しいのに。




「…ジョークだよエリック。これはイクラじゃなくて明太子だから。」


「結局魚の卵!?」




エリックの叫びは完璧にスルーして明太子は料理の一部となって食卓に現われる。


まぁ、エリックと暮らし始めてからいつもこんな感じだ。