学校を出て、気が付いた。



「待て、海乃、あなたの家はどっち?」


「オレの?芹沢と同じ方向。実は芹沢の家と近かったりするんだな♪」



は…?



「芹沢の家北町3‐6だろ?オレ3‐1なんだ。」


「待て、そもそも、なんで私の家を知っている。」



ふと前を見ると、校門の前まで来ていた。


いろいろと狐につままれた気分だ。


海乃は笑顔を崩さずに言った。



「…毎日、芹沢の泣き声が聞こえるから。」


「―っ…何の事?」



どうして、誰にも聞こえないようにしてきたのに。嫌だ。考えたくもないのに!



恨みがましく睨み付けると、海乃は笑顔を崩していなかった、だけどすこし悲しそうな笑顔になった。



「…ねぇ、ファンタジーって好き?」


「嫌い」



大っ嫌い。


みんな。


海乃も、嫌い。



「でも、昔は好きだったよね。ファンタジー小説。」


「海乃、あなたは何なんだ?私のストーカーか?」


「さぁ?なんだろう。当ててみてよ。待ってるから。」



そう言って、綺麗に整った顔に『男』を感じさせる笑顔を見せた。



「『当ててみせろ?』」


どういうこと?


私の奥で、何かがうずいた。