★〈真希〉★



相川は何をしたかったんだろう。


いきなり抱き締めてくるし、『良かった』なんて言ってくる。


何がよかったんだろう。

私は数少ない私服をタンスに整理しながら考えた。



「…不明だわ。あの男。」


「何が不明なんだいマキ。」



突然後ろで声がしてビクッと身体を反射的に震わせる。


よく母さんもこんな事をしたから癖になってしまっているようだ。



「おや、ダイジョウフ?あ、違う。んーと、Are yuo Ok?(大丈夫?)」


よくそんなあやふやな日本語でこの半年乗り越えれたなぁ…


まぁ大学だからね。


学生でもちょっとは英語喋れるだろうし。



「はぁ…I'm Ok.(大丈夫です。)大学のほうはよろしいんですか?」


「うん。それなんだよ。手伝ってもらうことがあってね。」



い、嫌な予感がする。



「まさか、始末書…?」

「キミの近くに始末書をしょっちゅう書かされている人がいるのは知っているけど、僕は勤勉なんだ。手伝ってもらいたいのはね…」



エリックはニコニコ笑顔で言った。



「ISP細胞の実用化」



それを聞いた瞬間、私は危うく生まれて初めて人を殺したいと思った。