「あ、いや、なんでも…」


「そう?なら、いいけど。」



落ち着けオレ。


他の事でも考えとこう。

そう思って立ち上がる。

そう、片付けしなきゃ。

エリックの仕事部屋汚いんだよなぁ…



「待って。海乃。」


「へ?」


「『フェアリーテイル』貸して欲しい。何か、思い出すかもしれないし。」



マヌケにもポカンと口を開けてしまった。


ていうか、



「思い出したいわけ?」

「思い出して欲しくないわけ?」



思い出して欲しいよ。


約束を果たすためにも。

オレ自身のためにも。


でも、



「芹沢にとっていいか悪いか分からない記憶かもしれないのに、そもそも失うぐらい軽いモノかもしれない。失ってしまうぐらいにつらかったのかもしれない。それでも?」


「そうだね…だけど、だからこそ、やるべきなんじゃないかな。記憶がないって事は、自分を知らないって事にならない?私は…知りたいよ。辛くても悪くても。それは『私』なはずだから。」



―だから負けないで。ショウは『ショウ』なんだからさぁ!―