「海乃、あなたどこに行っていたの?荷物置いて行かれちゃ戸締まりもできない。」


「あー、ごめん。ちょっとね。」



現在、5時50分。


よし、これなら大丈夫そうだ。



「明日締切りの原稿。やっておいたから、先生に提出しといて。」


「え!やってくれたの?」


「狩野が張り切ってやってくれた。感謝したほうがいいかも。」



あいつの得意な“愛想の振りまき”でもやってもらいますよ。


そう言って狩野はどっかのアニメのOPテーマを口ずさみながら仕上げた。なんだかんだ言って、海乃がいなくて寂しかった様だ。



「へぇ…正春がやってくれたんだ。お礼言わなきゃ。」


「電気を消して。閉めるから、外に出て。」



この時間帯ならセクハラ教師にも会わずにすむし母にも何も言われない。

なかなか今日は運がいい。



「―…芹沢。」


「なに。」


「これ、覚えてない?」


海乃が出して来たのは青いノート。



―『フェアリーテイル』―