『―人間の娘。ヨセフを助けてやってくれ。』



アンの服を掴んでいたゴブリンが急にそう言った。



「助ける?あなた達がヨセフを捕らえたんじゃないの?」


『―違う。確かにあの子の瞳の色を好んだが捕らえてしまったのは我らの仲間の1人、いや、正確にはメロウ達だ。』


「それは初耳だね、長。」


『―すまないヨセフ。だが外の人でないと成し遂げられないんだよ。だから、誰かが入って来るまで、嘘をついた。』


「あいつらじゃダメだったわけ?」


『―ああ。ダメだ。奴等は汚れているからな。だが、この娘なら―…』



出来る。


私に、ヨセフを救う事が、私なら。


アンは新たな冒険を前にして、話を聞いていなかった。



「アン、助けてくれる?」


「も、もちろん。とにかく、メロウとやらに会いに行けば良いのね?」


『―その前に、餞別を渡そう。ヨセフ、出る為にはゴブリン、ブラウニー、シルキー、バンシー、そしてメロウの呪いを解かなければいけない。』


ゴブリンの長は草むらからちょっと自分より小さめのゴブリンを連れ出して来た。



『―さっき、こやつがメロウに命令されてかけていた魔法を解いた。だから、アンにお前が見えるようになったのだ。あと4つの魔法は私に手助けできないが、ブラウニーは西にいる。』


「ありがとう。長。助かったよ。」


「次は、ブラウニーね?」


『―多幸を願うぞ、アン、ヨセフ。』



アンとヨセフは長にお辞儀をして、森の西へと向かった。




―…旅が、始まる。


〈―フェアリーテイルより抜粋―〉