「角膜移植…?」


「そうだ。」




なら、別に問題はないはずだ。


なぜ母さんがそこまで動揺しているんだろう。




「あー、角膜移植ってのは…その、あまり受けられないらしい。」


「は…?」




父さんは申し訳なさそうにそう言った。


俺はまた頭が混乱する。


父さんはそんな俺の口に買ってきたらしいパンを突っ込んでまた話を続けた。



ちょっ…苦しいんですけど。



俺はパンを無理矢理ちぎって食べた。ちょっと気が紛れる。




「角膜移植には角膜の提供者が必要だ。それはアイバンクっていうとこに登録している人が提供してくれる事になっている。」


「それで?」


「ったく…俺に似て頭わりぃな。いいか、日本でアイバンクへ登録している人はそういない。しかもそのアイバンクに登録している人が脳死かなんかにならなきゃ、角膜提供なんてできないんだ。」




そんな、まさか。


俺は混乱して、口からパンを落としてしまった。


そんな俺に、またもや父さんのゲンコツが降ってきた。




「ってぇ…!」


「落ち着けつってんだろ。話はまだ途中なんだよ。」




父さんはチラッと時計を確認して渋い表情をした。



時刻は8時10分。



…遅刻だ。




「いい。午前フケる。」

「俺に似て不真面目な息子だ。」




父さんはニヤリと笑って、話を続けた。