「相川……?」


「黙ってろバカ。」




そう言った相川の声は、泣きそうだった。



顔を首筋にうずめられているからか、少しくすぐったい。


私は身をよじって相川から逃れようとしたけれど、無理だった。



どんどん力を込められて少しも動けなくなる。




「放して相川…苦しい。」


「放さない。」


「なんで……?」


「それ、俺に聞くのか。」


「そう言われても…」




誰に聞けって言うんだ。


それでも、私は相川から伝わる温もりを手放すのが怖くて、相川の服を握っていた。




「あったかい……」


「少し、寝ろ。疲れてるんだろ。」


「やだ。」


「やだって…何言ってんだよ。」




相川は力を緩めて私の顔をのぞきこんだ。




「寝ろ。真希。ちゃんと起こしてやるからさ。」



そう言って、優しくほほ笑む。


ゲロ甘顔がさらに甘くなった。




私は安心して、意識を手放す―――。