オレは、泣き虫の海乃 翔のままなんだ。
15歳のオレは、キミに希望ひとつ持たせられない、そばにいる事しか出来ない、見守る事しか出来ない、無力な人間なんだ。
「…外の空気、吸って来る。」
「もう10時だよジュニア。」
「コンビニ行くだけだよ。アイスでも買ってくる。」
オレは何か言いたげなエリックを寮に置いて外に出た。
1人になりたかった。
でも、無駄にでかいモダンな屋敷の前で、オレの冷静さは吹き飛ぶ。
平和に、ただもくもくと読書をする、真希の父親…芹沢 敏郎氏。
なぁ、わかるか?
あんたの娘は、右目を失うんだ。
あんたのその下らない事に使う右目を、真希にあげてくれよ。
冷静ではいられない。
激しく怒りが頭を支配する。
自分は何も出来ない悔しさと、
芹沢 敏郎の無関心さへの怒り。
どうすればいい?
どうすればいい?
どれだけ考えたって、答えなんか見つからない。
無力感から、オレはその場から動けなくなる…
「―海乃…?―」