「あの娘をあそこから連れ出せるまで、あと3ヶ月。」



あと3ヶ月で、俺は常勤講師になれる。


そしたら、真希1人位面倒みれる。従兄弟だから、同居しても怪しまれる事もあまり無いだろう。


東京大学を出て、わざわざ桜翔の教師になったのは理由がある。


すべては真希をあそこから連れ出すため。


だから、


それまで、手を尽くさなくてはいけない。


あの時の真希を、消さない為に。



「それまでには、思い出して欲しいですね。芹沢には。」


「は?またお前か、海乃。立ち聞きか?もう5時30分だぞ?」


「先生は、知りませんか?」


「なにを。」


「芹沢の記憶について。」



海乃の手には1冊のノートがあった。



―『フェアリーテイル』―



拙い字でそう大きく書かれていた。



「なんだ?それ?」


「知らないなら、いいです。それじゃ。」


「待て。そのノート、どっかで…」



見たような。


あっ!



「真希に渡された。4年前に。」



そう。まだ、少しでも笑えた、あの結婚式の後だ。