「ねぇヨセフ、この人、妖精よね?」


「うん。たぶん…ルナかな。月の妖精の…」


『―いかにも。それは私の娘でしてね…助けていただいてありがとう。―』




美しい長い銀髪をもつ女の人が、2人の前に降り立った。


見た目は20代中頃ぐらいなのだが、私の娘と言ったルナもそれくらいの年頃に見えるから、なんだかややこしい。



ルナといえば…たしか夜道の案内が得意だったのだっけ。



アンは大昔に読んだ絵本を思い出す。



―森の夜道で迷ったなら、ルナを頼って川辺の道。

白銀の光を目印に、目的地まで道案内。―




『―幽霊狩りが、まさかここまで深い森にまで手を伸ばしていようとは…迂闊でした。―』


「すまない。父上…王も幽霊狩りに関しては雲を掴むようで…」


『―王子、それは存じております。私はルナの長。ルナは月の妖精。月は、夜に起こった事をすべて見ているものです。―』




ルナの長はヨセフにそう言ってほほ笑みかけると、今度はアンのほうをしげしげと眺めた。




「あ、あの…?」