「比を使うんだ。これは問題から推測して水素元素が3、炭素元素が1になるから答えはメタン。さらにこの分子式を使って熱化学反応式を書きヘスの法則で答えが出る。分かったか!?」


「わぁー。さすが!」



死ぬ。死にそうだ。パッと見ただけで分かるはずもないモノを分からない事に気がつかれないように考えながら教えるなんて芸当金輪際ごめんだ。

寿命が半分縮んだぞ海乃。若々しさを分けろ。



「あぁ、そうだ海乃。お前真希と同じクラスだよな?」


「そうですけど?」


「保健室に放課後連れて行ってあげてくれないか。あいつ腕にちょっと火傷していてね。」


「もう行きましたよ。痛そうだったので、オレが無理矢理連れて行ったんです。」



なんとなく朝のあの顔の意味がわかった。


海乃は俺がうらやましいんだ。


真希の近くの存在だから。


でもさ、



「俺、下がる気はないよ?」



昔、昔の結婚式で、


一瞬、1度だけ笑ってくれた、あの顔を自分のものにする為に。



「オレも、下がりませんから。目的を、果たすまで。」



海乃はその綺麗に整った顔で、ほほ笑みながらそう言った。