苦しくても、逃げるべきじゃなかった。
オレは偉そうに人生を語れる程経験を積んだ訳でも、歳をとってる訳でもないけれど、
オレの周りにいた、暖かい人達は、苦しくても逃げない事を教えてくれた。
真希はどこだろう。
1人で泣いているかもしれない。
それはいやだから、
オレは頭をフル回転させて真っ直ぐ生徒会室に向かった。
ドアが開いている。
息を切らせてのぞき込むと、奥にある生徒会長室に人の声がした。
『……はなして。』
『……………』
『んっ……ちょっ…!』
真希と…だれか、いる…?
オレは中をのぞき込んだ。
真希と…正春…?
『俺は、小等部のときから、ずっと見てた。』
『小等部…?』
『芹沢は覚えてないかもしんないけど、俺は…!』
会話からして、告白シーン。
そう理解した瞬間、オレの中にどうしようもないドロドロしたものがこみあげてきた。
カンっ…!
やばっ…
俺は足下に転がっていたシャーペンを蹴ってしまっていた。もちろん生徒会長室にいる2人はこっちを見た訳で…
「………翔…」
「何してんだよ、正春。ふざけんなよ。」
オレはうまく感情をコントロールできずに、言うだけ言って真希の腕を引っ張ってその場から立ち去った。



