「書類なら、そこに置いといて。あたしは、まだここにいるから。」




あたしはできるだけ普通に聞こえるように言った。


1日や2日で鉄仮面の認識が変わる訳でもないのに、あたしが泣くなんて変だ。


きっと笑われる…




ガチャッ!




え…



狩野がドア開けた!?



あたしに近付く上靴の足音。



あたしは会長室の床の真ん中で無様にもへたりこんでいるから、そばに来た狩野を見上げなければならなかった。




「…ほら、泣いてんじゃん。」


「泣いてない。」




あたしは制服の袖口でゴシゴシ目をこすった。



泣いてない。



あたしは、あんなことでは泣かない。



あたしは鉄仮面女だから。



泣かない。


泣いてない。