「ならマキが立つかい?私はどうも、料理が苦手でね。」


「そういえば、昔よく焦げた小麦粉がでたよね…」




死ぬほどまずかったなぁ…アレ。




「焦げた小麦粉?それ食べたの?」


「うん。死ぬほどまずかった。」


「そりゃあそうでしょ。」




芹沢は自然に笑った。


まだ涙は見せないけど、笑った。


それだけでも一歩前進だ。




「あ、そうだ。頭痛薬ってある?」


「頭痛がするのかい?」

「うん。ちょっと。」


「そのせいか視界が暗くて…」




芹沢がそう言った瞬間。エリックは表情をこわ張らせ、芹沢の顔をつかみ目を調べ始めた。


緊張がはしる。




「マキ、暗いのはどっちか分かる?」


「えっ…左、かな?頭は右側が痛い。」




エリックはそれを聞くと、オレのほうに振り向き、耳元で囁いた。




「脳に出血巣があるかもしれない。このままだと、マキは最悪視力を失うかもしれない。」




理解が追い付かない。


芹沢の目が、




見えなくなる?




そんなこと、


あるもんか。