フェアリーテイル~キミとオレとの約束~

☆裕★




言ってくれるじゃないかクソガキ。



真希の一人称が私からあたしに変わった。




「9年の片思い…いや、両思いか?」




長いな。


いや、9年じゃない。


9年。


それが真希と海乃の思いを成長させたのか。



俺は何してんだか。


あいつらが話し込んでいる踊り場の階段を下った所で、俺は立ち聞きをしている。




「で?お前さんはどうするつもりだ?指くわえて舞台にも上がらずに見ているだけ、か?」




俺は同じく固まっている彼に声をかけた。


全く、どいつもこいつも、なんで真希にホレちまうんだろうな。




「舞台に上がる、資格がないですよ。俺には。」

「じゃ、何もせずに見ていなよ。けっこうキツいぞ。好きな女が、目の前でかっさらわれるのは。」




現に俺がそうなんだけど。


最近、真希が俺に甘えていた事が分かるようになって、


親戚のお兄ちゃんでも、あの娘のそばにいれるんなら、いいかなって思うようになった。



泣かせられたり、悲しませられたりしたら、容赦なくさらえるし。



でも彼は、まだ何も言ってない。


せっかく教師をオトしてまで手に入れた自分の立場を使おうともせず、ただ、見てるだけ。


いろいろ遊んでカムフラージュして、


ただ、見守ってる。



どこの純愛ドラマだ。




「なぁ、それで言い訳?




狩野 正春クン。」





彼も、ひょっとしたら真希という、フェアリーリングにハマった、1人なのかもしれない。



なんて、ちょっと俺らしくないか。