「名前を聞いても大丈夫ですか?」


『あ、はい。』


ドキドキ脈打つ鼓動が、ベルの全身を駆け巡った。


『私、ドアベルマンの、ベルと申します…。』


妙によそよそしくなってしまった挨拶を、お嬢様は笑いもせず聞いてくれました。
そして、ついにお嬢様の名前を知ることが出来たのです。


「ベルさん。
私は、ティンカです!」


『ティンカ…様』


「ふふっ 様なんて付けなくていいから、ティンクと呼んで?」


『ティ、ティンク…様』


「ふふっ 職業病ね」


『申し訳ごさいませんι』


「そんな丁寧に謝らなくていいわよ!」



お嬢様は、柔らかい笑みを残し、街灯が照らす道を昨日と同じ方角へと歩いて行きました。