「本当に何も聞かないのね…」


お嬢様が口を開くと、ベルに届いたのか『聞いてもよろしい事だったんですか?』と答えた。


「本当にイジワルね…」


『お嬢様がそうおっしゃるなら、きっと私はイジワルなんでしょう。』


小さく微笑み俯くと、階段下から「私ね…」と声がしました。


それに反応するように、振り向くと、黒い傘の向こうで「振られちゃった…」
そう震える声が返ってきました。


それを聞いたベルは、驚きましたが、どうしてそんなことをベルに言うのかが気になって仕方ありませんでした。



「好きな人が出来たんですって!」


明るく話すお嬢様の肩が、少し動いたのをベルは見逃しませんでした。


『…そうですか。』


「せっかくオシャレしていったのに、バカみたい。」


『そうですね。』


「…あんな男、私の方から願い下げよ!!」


『お嬢様には似つかわしくない方でしたから。』


「そうよ!私にはもっと似合う男がいるはずよ!!」


『…そうですね。』


こんな時、自分を進めるのがいいんでしょうけど、今のティンク様に悩ませるようなことはできない。


そう思ったベルは、何も言いませんでした。