小さな街のドアベルマン


「ねえベル?」


『何でしょう?

─こんにちは。』


ベルは仕事をしながら、お嬢様の問いかけに返事を返しました。


「ベルは何年ここに居るの?」


『約10年ほどになります。』


「そんなに…
辞めたいって思った事ない?」


『ありませんよ?
この仕事に誇りを持っていますので!』


「そう。」


質問攻めにあっていると、これまた常連のお客様が「おはようベル。
おや?隣に居るのは恋人かい?」と話し掛けてきました。


ベルが返事を返す前に、「そんなんじゃありませんよ!ねえベル?」とお嬢様が返事をしました。


その返事を聞いたベルの心はズキズキ痛みました。
そして、その痛みに耐えながら、話を合わせ『はい。残念ながら』
と無理やり作った引きつる笑顔を向けながら、そう言いました。


するとお客様は「なんだ、違うのか!」と少しがっかりしながら、ベルの開けたドアからホテルへと入って行きました。