小さな街のドアベルマン

ベルは一瞬、戸惑った表情をしましたが、『急用がありまして…』
そう目を伏せながら言いました。


「ベルって嘘つきなのね。」


急にそんなことを言われ、お嬢様を見ると、胸の前で腕を組み少し怒ったような表情でベルを見ていました。


『…どうしてですか?』


少し戸惑い気味に訪ねると、お嬢様は「風邪引いてたんでしょ? 言ってくれれば、お見舞いに行ったのに…」と
そう言われ、ベルはホッとしました。


『すみません。
迷惑を掛けてはいけないと思ったので。』


ベルは軽く会釈し、お嬢様の瞳をジッと見ました。


もう逸らすことも、自分から話し掛ける事も止めよう。


此処へ来る途中、ベルはそう決意し仕事につきました。


聞かれた事にだけ答えようと。
そうすれば、傷つかずにすむ…そう思ったのです。


そんなベルの思いなど知らないお嬢様は、他のお客様の邪魔にならないようにと、ベルの隣に移動しました。