こんな時間帯に街をうろつくなんて想像もしていなかったベルは、ドキドキとワクワクが入り混じった不思議な感情に少し戸惑っていました。
すれ違う人は皆、ベルだとは気づいていません。
きっと、いつものようにドアの前に居ると思っているのと、誰もベルの私服姿を見たことが無いからです。
「お兄さんベルに似とるな!」
そう声を掛けてくるご老人でさえ、本人とは思っておらず、似とるなの言葉に少し変な感覚を覚えました。
『似てる。か…』
ベルはふと、ホテルに行ってみよう。と思いました。
行って何をするわけでもなく、ただ自分が居なくなった後の変化を見てみたくなったのです。
カ~ン カ~ン
もうすぐお昼になることを知らせる鐘が、あちらこちらで鳴り響きました。


