アイツと

メイと結婚式を挙げたいと思ったのは先月の事。


梅雨の時期にも関わらず、雲一つない晴天の日だった。



大学の授業が終わり、メイと買い物をしに街を歩いていた時。


「おめでと~!!」


すぐ近くから聞こえてきた祝福の言葉。


しかもそれは一人だけではなく、沢山の声が耳に入ってきて。


ふと振り返ると


そこにはとても幸せそうな男と女が
周囲のたくさんの人達から祝福を受けながら教会から出てきた。



二人の幸せそうな笑顔はつい俺まで足を止めて見てしまうくらい


眩しくキラキラ輝いていた。



「おい、メイ」


反対を見るとメイもその二人に釘付けだったみたいで。


「メイ、メイ」

何度呼んでも返事はなかった。


そんな時に漏れた言葉。


「いいなぁ」


そう、だよな。


俺達は結婚式なんて挙げてない。





前にメイはこんなことを言っていた。



「あたしはみんなから祝福して
もらう資格なんてないの」


いくらヒミツとはいえ、結果的にみんなを騙してしまった事を

卒業して数年経った今でも罪悪感があるみたいで。


「みんなを騙していたあたしが祝福してもらうなんて
図々しい事できない」

「今、こうして想と花の近くにいられるだけで十分」

そう言っていた。


でも今は


「いいなぁ~」


ほら、またそんな風に漏らしている。


・・ったく仕方ねぇな