僕はみとれていた



羽をむしりとるという
自分の一部分を無くす行為

その動作のひとつひとつが
やけに繊細で丁寧で

舞い落ちる羽毛と
少し傾いた太陽と
あまりにも白い肌と



それは性行為にも似た恍惚と
高名な画家の絵のような純粋な美しさ



ただ ただ 美しい





彼女の目から涙がこぼれるのを見つけ

はっと我に帰った

3cmほどの灰をつけたタバコを踏みつけ
その彼女に近付いた



「何してるん?」

困った僕は
聞くまでも無いことを聞いた


「羽をむしっててん」


どうやら天使は関西弁らしい


「なんでそんなことを?」


「だってしゃーないやん。
みんなと違ってたら嫌やろ?」



そこからの会話はあまり覚えてない。

ただ他愛もない話をした気がする。



ただひとつだけ



「桜?変な名前やな。」

と彼女は笑った


そうだ。

のっぺりと感じたのは
表情がなかったからだ。



僕たちはどちらともなく会話をやめ
帰ることにした。


「またな」

僕は言った


「○○○○○」

彼女は小さな声でつぶやいた。