『引っ越し? 何でまたそんな面倒な事を…』

マンションを引き払う事を太一に告げると、太一は眉間にシワを寄せて言った。

『ま、ちょっとな。 家賃も高いやろ? もう少し安くできんかなぁと思っててん。』
『ふーん… 貧乏性だね、佳晴は。』

…貧乏性言うな。
太一とは育ちが違うんだよ、育ちが。

『んで? どの辺にしたの?』
『あ? 何が?』
『マンションだよ。 どの辺?』

ど、どの辺って…
俺もまだ見にいってないんだよな。
詩織の話を聞いただけで…

『まぁ、店の近くだよ。 俺もまだ道が解らんけど。』
『あ、曖昧だな佳晴…』

曖昧で結構。
むしろ太一にバレないなら何だっていい。

恋愛禁止なんて面倒なルールのせいで、こうなったのだから…

『なぁ、太一。 恋愛禁止って何で?』

ずっと気になっていたルール。
誰が作り、誰が定めたのか。
それはずっと聞けず仕舞いだった。

『ホストである以上、誰かが悲しむだろ?』

しかし聞いてしまえば意外とあっさりと答えが返ってくる。

『父親がホスト、恋人がホスト。 ホストでいる以上は大切な人に負担をかける。』

負担…?
ホストでいる事が?

『俺は自分の父親がホストだって事に負い目を感じて育ってきたし、将来は自分もホストになるんだと思ったら勉強する事すら無意味だと感じてきた。』

難しい話だ。
うっすらとは解るんだけど、完璧には理解出来ない。

俺がホストを続けている事で詩織の負担になるわけじゃないし。
傷付くわけじゃない。
ホストは俺達の恋愛にとって何の障害でもない。

ずっとそう思ってきた。

【父親はホスト 母親は風俗嬢】

ハルにそんな噂があった事を知った時。
ようやく太一の言葉を理解したんだ。