不意に足元を掠める、なにか。
――ビクッ
思わず肩に力が入り、ハッとしてそのなにかに視線を送る。
暗闇に光るふたつの光。
それはユラユラ揺れて、まるで挑発するみたいに鳴いた。
「ミャオーーン」
……またお前か!
なんつータイミング。
懐いているはずの未央じゃなく、俺の足元にその華奢な体をすり寄せて甘えた声で鳴く子猫。
「……」
ジロリとそいつを見やって、踏まないように足でそっと避けると「はあ」と小さく溜息を吐いた。
子猫は恨めしそうに俺を見上げると、身を翻して開いていた窓から姿を消した。
それを見送ったあと、ふと視線を戻すとその先には月明かりに逆光になった未央がいて。
表情ははっきりわからないけど。
俯いている未央の両手は、スカートを握りしめてた。
そして……。
「いやだよ……要……行かないで……」
「……」
そう言って俺を見上げる瞳。
震える唇をキュッと結んで、真っ赤な顔で必死に訴える未央。
だから、なに泣いてんの?
わけわかんねー。
俺、なんか泣かせるようなことした?
「……あー! もうっ」
吐き出すようにそう言うと、強引に未央を引き寄せた。



