「なにしてんの?」
「……へ?」
突然の声に、ハッとして顔を上げる。
そこには……。
「……あ、……要……」
ひえええええ!
いっ、いつからそこに!
さっきまで電話してたんじゃん?
見上げた先には、いつかのように少し顎を上げて挑発的な視線をあたしに向ける要の姿。
視線が絡まり合うのと同時に、その片眉がピクリと上がる。
「…………。
あ、や……その……ほら。の、喉! 喉渇いちゃって……あ、暑いからさ」
一瞬の沈黙の後、要のその表情に弾かれたみたいに勝手に動くあたしの口。
あわわ。
動揺してるのバレバレじゃん……。
サーッと顔から血の気が引くのを感じながら、あたしは引きつった笑顔を作った。
「へーえ。 喉がねえ」
要といえば、あたしの心の中が読めちゃってますって顔で「ふん」って笑うとポケットに手を突っ込んで口の端をクイッと持ち上げた。
うう……。
ま、負けそう……。
「そう。喉が……」
「……」
ただ黙ってあたしを見下ろす要の顔を見ていられなくて。
モゴモゴと呟きながら、俯いたあたし。
無造作にセットされた真っ黒な髪が揺れて、伸びた前髪の隙間から少しだけ茶色がかった瞳があたしを覗き込んだ。
その瞳に捕まると、あたしは身動きが取れなくなる。
要は、あたしをそうしてしまう方法を知ってる。
だから、そんな目であたしを見るんだ。
「……」
「……」
なによ、なによ。
要、あたしになにか隠してるでしょ?
昼間のこと、あたし忘れてなんかないんだから。
真っ赤に染まる頬を抑えたくて、唇をキュッと結ぶ。
あたしの小さな抵抗は、要の顔から笑顔を奪った。
「……未央」



