気まずいまま夕食を済ませ部屋に戻ったあたしは、大きなベッドに腰を下ろして、ただ夜空を見上げていた。


カーテンを開け放っておくと夜空に輝く星達が見える。



シンと静まり返った室内に、窓の外から虫たちの鳴き声が耳を掠めた。


美咲さん……なんの用なのかな……。


きっと、今頃要は美咲さんに電話をかけてる頃だ。



「……」



……。
…………。
………………。




別に。
気になるってわけじゃない。


要が何を話してようと、別にあたしには関係ないんだけど。




「……」




あ~あ。

な、なんか喉かわいちゃった。

……本当に喉が渇いたんだもん。



あたしはまるで自分にそう言い聞かせて、金色のドアノブを捻って廊下に出た。



白い壁に手を付いて、緩いカーブを描く階段をゆっくりと降りる。



広い玄関ロビーに、要の姿が見えてあたしはそそくさと影に隠れた。
丁度電話をしているところで、その話声が微かに聞こえた。



「……そ―――じで? ……―め……と……」




……なに?よく聞こえない……。

壁に両手をつくと、張り付くようにして耳を澄ます。


美咲さんと話す要はすごく嬉しそうで、その声のトーンはいつもよりワントーン高い。


もおお。何話してるの?
そんな楽しそうにしちゃってさ……。
さっきまでムスっとしてあたしの顔なんてジトーって睨んでたのにッ!


目じりを下げて、少し小首を傾げて笑う要の姿が見なくても目に浮かぶ。



盗み聞きなんて、イケナイってわかってる。


だけど、その衝動を抑えられなくて。
あたしは意地になって壁に頬をギュッてくっつけた。




――その時だった。