「あ、そうだ」
あたしがジトーッと要を睨んでいると、ママが突然両手をパチンと合わせた。
「要くんに、日本から国際電話が入ってたんだ」
「俺に、ですか?」
コトリとグラスをテーブルに置くと、要はキョトンと首を捻った。
「うん。 女の人だったけどな……」
ドクン
また心臓が鈍く脈打った。
――女の……人?
ママは顎に人差し指をトントンとあてた。
「あ、そうだ。 確か、ミサキ……って言ってたかも」
「……」
ミサキ?
ミサキって……美咲さん?
要の……『元カノ』の?
美咲さん、要になんの用だろう。
国際電話なんて、特別な話に決まってるよ。
美咲さんと要の間に、今は何もないとわかっていても。
過去の話だってわかっていても。
心の中に沸々と湧き上がる、醜い感情。
「……」
まだ残ってるお肉を食べる気にもなれず。
あたしは、それをジッと眺めた。
浮かんでは消え、浮かんでは消える考えに自分自身が戸惑ってる。
「……」
そして。
さっきから痛い程感じる要の視線。
だけど、あたしには顔を上げる勇気がなくて。
要の顔を見るだけで、昼間のキスシーンが脳裏を霞めてしまう。
だから、あたしはそれを誤魔化すようにグラスのお茶をグイッと飲み干した。