それから、あたしはどうやって家までたどり着いたのか覚えていない。
ただ、ジーナさんの顔も見れなくて。
ましてや要の顔なんてもっと見れなくて。
ケンゾーさんの声にただ頷いてた、そんな感じだったと思う。
その日の夕食は、久しぶりに帰ってきたママも一緒で、あたしと要と3人でテーブルを囲んでいた。
忙しいママに代わって食事を作ったのはリンダで。
そのリンダは、夕食を作ると夏休暇をとって郊外の実家に帰って行った。
戻ってくるのは約2週間後。
いつもなら、リンダがいて……。
彼女とあたしが、他愛もない話をして。
要が黙ってそれを聞いてるって感じなのに……。
今日は、
「……」
「……」
無言。
もちろんあたしとママが話さなかったら。
要はいつも通りってわけなんだけど。
あたしも、なぜか会話の糸口が見つからず……。
目の前の、ポークソテーを必死に口に運んでいた。
でも。
そんな重たい雰囲気を破ったのは、他でもないママだった。
「なによ、あんた達……ケンカでもしたの?」
「……え?」
……て、ママ!
そう思うなら、どうしてそう言うこと聞くかな!
気まずいのに、『ハイ、ケンカしてます』なんて言えないよー。
だいたい……。
ケンカってわけでもないんだ。
要は、いつも通りって感じだし。
ただ、あたしが。
あたしだけがあのシーンを気にしてて。
チラリと要を見上げると、相変わらずグラスに入ったお茶を飲み干すところ。
全然気にしてませんって、顔に書いてあるみたいだ。
むー……なによ。