ビジネス街を離れて20分くらい自転車で走ったところに、俺たちの住む家がある。
家の窓からはミシガン湖が見えるほど近くにある。
ここまで来ると、とてものどかな昔のアメリカらしい街並みが続いていた。
そのギャップに俺も惹かれていた。
そして。
俺がこのアメリカに来たかったもうひとつの理由。
それは、自分でデザインしたシルバーアクセサリーを店で出すこと。
本場で基礎を学びたくて、この夏休みに入ってから俺はその勉強に打ち込んでいた。
1年前、未央に贈った苺の指輪は、俺が初めてデザインして作った物で。
今見ると、不恰好で歪だけど、あの時はあの時なりに真剣だった。
今も右手の薬指に身に付けている未央を見るたび、照れくさいような妙な気分になる。
それから休みの日なんかは、カフェでバイトもはじめた。
未央の父さんはバイトなんかすることないって言ってくれたけど、そう言うわけにも行かない。
俺が無理言って、日本を離れてこっちで暮らしてるんだから。
ある程度自立して生活しないと。
まあ、1人暮らしも考えたんだけど。
未央が、きっといじけるだろ?
……って言うのは口実で。
ほんとは俺が未央といたいってのが大半。
それも、ヒミツだけどな。