ジーナの登場で、ケンゾーの態度は一気に小さくなった。
ほとんど、彼女のリードで俺たちはパーク内を回った。
「じゃあ、次はあれに乗りましょ! もちろん、未央と要、あたしとケンゾーで」
「……」
ジーナは、ケンゾーとこのリンカーンパークに来たのは初めてだと、物凄いはしゃぎよう。
一体どっちが年上なんだよ?
俺と未央は、そんな彼女に「うんうん」と頷くのが精一杯だった。
それは、ケンゾーも同じのようで、まるでさっきまでの勢いをなくしてしまっている。
「……あの二人、大丈夫なのかな?」
未央は、後ろを振り返りながら言った。
白い船体に黄色いラインの入った二人用のボート。
俺は、オールを漕ぎながら視線だけを向ける。
少し離れた場所で、何かをしきりに指差しているジーナ。
その拍子に、二人の乗っているボートはグラグラと揺れ、慌てたケンゾーはジーナの肩をグッと抑えている。
「……」
なんとなく、この時ばかりはケンゾーを気の毒と思ってしまった。
「危なかったね……」
まるで独り言のように、ポツリと呟いた未央。
「……」
「気になんの?」
「……え?」
驚いたように、大きな瞳をさらに見開いて俺を見つめる未央。
でも、そんなのはどうだっていい。
俺はジッと未央から視線を逸らさない。
なんて言う?
気になるの?
ならないの?
何度も瞬きを繰り返し、その口は言葉にならない声を上げた。
「……そ、それはどう言う……」
「そのままだけど?」
オールを漕ぐのをやめて、真っ赤に染まっていく顔を眺める。
だから。
それは、どういう意味だよ?