息を切らしたあたしに、要はジロリと冷たい視線を向けた。
ズキッ!
な、なにその目……
「行けばいいじゃん」
「え?」
唐突に要はそう言うと、さらに目を細めてソファから立ち上がった。
そのままリビングを出て行こうとする要。
あたしは咄嗟にその腕に手を伸ばした。
「……なに」
嫌そうに視線を落とした要に、思わず怯みそうになりながらあたしは言葉を探した。
どうしよう……
このままじゃ誤解されちゃう
「あ……要、支度済んでる?」
「あ?」
「済んでるんだッ! 早いなー……。あたし、かばんとってくるからちょっと待っててよね」
「え……ちょ、なに……」
あたしは顔の前でパチンと両手を合わせて、そのままドウドウのポーズをとりながら自分の部屋に向かった。
ひゃー!
怒ってるかな……?
『あ?』って言った時の要の顔、怖かったよぉ
あたしはビクビクしながら自分の部屋に戻ると、簡単に髪を結いなおしてリップを塗った。
ってゆーか、ほんとに来たんだ……
あの、ケンゾーって人。
悪そうな人じゃないんだけど、あぁゆー軽いタイプ苦手なんだよね。
大きくなった要に会ったときの印象と似てる。
要は今でさえまるい雰囲気になったけど、最初は遊んでるってオーラが滲み出てたもんな……
そんな要が、あたしがケンゾーと遊びに行くってだけでヤキモチ妬くのかな?
……ない。
なさすぎる……。
「……はぁ」
あたしはガックリと肩を落とすと鏡の中の自分から視線を逸らした。



