嵐のように去っていくジーナ。
一体なんだった?
俺は、静かになった店内をぼんやりと眺めた。
「あの綺麗な人は、ケンゾーさんの彼女さん?」
そんな言葉に、俺の意識は現実に戻される。
視線を向けると、未央が興味深々という表情をして、その瞳をキラキラと輝かせていた。
向かいのイスに座り、俺と同じように呆けていたケンゾーも、また同じように意識が引き戻されたようだ。
「え」と小さく言いながら、二度ほど瞬きをした。
そして、なぜか納得したように、口の端をクイッと上げて未央に顔を寄せた。
「嬉しいな。 俺の事が気になるの?」
「え?」
本当に嬉しそうな笑顔で未央を眺めるケンゾー。
そのケンゾーに、今度は未央が首を傾げた。
俺は開いた口が塞がらず、固まる。
頬を真っ赤にした未央が、困ったように俺に視線を送る。
……なんで、お前が照れてんだよ。
「はあ……」
勝手にしろよ。
なんだか無性にイラついて、俺はそんな未央から視線を落とした。
こんな男に振り回されてたまるか。
「そうだ、未央ちゃん。 今度俺とデートしてよ?」
「へ?」
「はあ?」
俺は思わず眉間にシワをよせ、ケンゾーを睨む。
ケンゾーはそんな俺なんかお構いなしで、未央の手を掴んで迫る。
「あ、あの……あ……あたし」
挙動不審の未央。
きっと、こんな風に男から誘われた事なんてないんだろう。
真っ赤になって、でも必死に断ろうとしてる。
しょーがない、助けてやるか。
「あのさ……」



