「隠れてないで出て来い!」
「……は?」
だから、誰が!?
鼻につきそうなほど近くまで迫られて。
さすがの俺も身を引いて、それに触れないように回避する。
つーか、なにこれ?
そして、二つの果実は大袈裟に上下して、バッと両手が伸びた。
「ケンゾー!!!」
「うわッ! ごめんッごめんって」
…………ケンゾー?
状況がわからず、後ろを見る。
そこには、いつの間にかケンゾーの姿。
俺と未央が座るイスの下に身を潜めていたケンゾーは苦笑いをして観念したように体を起こした。
ケンゾーは、寝癖なのかパーマなのかわからない髪を、くしゃくしゃといじりながら、腕組みをしてるブロンド女に歩みよった。
モデルのようなブロンド女と並んでも、引けをとらないケンゾー。
「ジーナ、来るなら来るって連絡してくんなきゃダメでしょ」
「ふざけてんの? それとも本気?」
「…………だよね?」
ヘラヘラ笑っていたケンゾーの顔は、ジーナの言葉でみるみるうちに笑顔が引きつっていく。
「なんで隠れたりするの? だいたい今日はあたしに付き合ってくれるって約束だったでしょ? いつもいつもどっかいなくなっちゃうんだから。 ほんとに目が離せないわよッ。 ちょっと!! ちゃんと聞いてるの?」
「聞いてるよー。 そうそう、ジーナにプレゼント買おうと思ってさ」
ケンゾーはそう言うと、近くにあった棚から大ぶりのネックレスを手にした。
「ほら、これなんかどお?」
「あたしがネックレス嫌いなの忘れたの?」
ジーナの冷ややかな視線に、見るからに愛想笑いだったケンゾーの顔から、再び笑顔が消えた。
「……要、あのジーナさんて人。 すごいね」
「……」
未央がそんな事を耳打ちして来たから、俺はようやく現実に引き戻された。
アホらし。
こんなの構ってられっか。
そして、俺はまた手元に視線を戻した。



