白いカーテンがふわりと揺れる。

外は、朝の穏やかな時間が流れてる。
キッチンからは美味しそうな匂い。


なんだろ、この香ばしい香り。

――あぁ、 そうだ。 
これはフレンチトーストだ。



「……要……ちょっと待って…」

「なんで?」



顔を背ける未央の瞳を覗き込みながら、俺は唇を尖らせて見せる。


「なんでって……」


そう言って、未央はさらに頬を赤らめた。
未央が、俺のこの顔を見ると何も言えなくなるのをよく知ってる。

それがわかってて使うのは、反則?



「……だって……人が来ちゃうよ」



恥ずかしそうに言った未央だけど、もう抵抗する気はないらしい。



「来たっていいじゃん。 もうバレてるって」

「えぇ! なな、なんで!?」



呑気ににゃははと笑った俺を見て、赤くなったり青くなったり。


ほんと、忙しい奴。



だから、目が離せないんだ。
だから、ほっとけない。



でも、そう思ってるのは。
俺だけのヒミツ。




日本より少しだけ長い夏休みがもう始まってる。



太陽はいつの間にか、ジリジリと町を照らし始めた。
青い青い空には、どこまでも伸びていきそうな白い入道雲。



シカゴへ来てから二度目の夏が来る。