「そう怒るな、カナメ」
マスターが、俺にカラフルなパステルカラーに身を包んだキャンディを差し出しながら言う。
しかも、ほとんど苺味。
そんなもんで釣られるか。
子供じゃねぇっての。
本に視線を落としたまま何も話さない俺の向かい側には。
さっきから楽しそうに笑っている未央。
俺はその顔をチラリと見て、また手元の本に視線を戻した。
未央は、俺を可愛いと思ってたのか?
俺、なんか男として自信なくしそー……。
だって、可愛いってなんだよ?
確かに、日本に居る時年上のお姉さま方に、そう言われた事もあるにはある。
未央に……。
完璧童顔の未央にそう思われてたなんて……。
俺、トラウマになりそう……。
ふと顔を上げると、店の入り口付近で、ケンゾーは何やら真剣な表情で手元を見つめていた。
それは。
小さな指輪。
ケンゾーが作ったものなんだろうか?
この位置からは、それがどうゆう形なのかは確認出来なかったけど。
その瞳はさっきまでの、気色悪さはどこにもなくなっていた事は確かだった。
一体、アイツは……なんなんだ?



