別に。
他人がどうあれ、俺は、俺。
「はぁー」
まるで自分に言い聞かせてるみたいだ。
頭の中がモヤモヤしていて、何も手につかない。
気になるのは目の前の紙じゃない。
「これかわい~~」
「それも俺が作ったの。 あ、そうだ、今度未央ちゃんのために作ってあげるよ」
そんな会話が嫌でも耳につく。
なんかマジで腹立つし。
なんだ、これ。
こんなの、俺らしくねぇーって。
頭の中ではそんな事を考えながら、表向きは相変わらず興味ないふり。
頬杖をついて真っ白な紙を眺める俺は、シャーペンの芯をカチカチと鳴らす。
そして。
「やっぱ女の子はオシャレに興味があるんだね~。未央ちゃんみたいに可愛い子なら飾らなくても、全然大丈夫だけどね?」
「えぇッ!?」
簡単に、そんな寒いセリフは吐いて、やたらと未央に触るケンゾー。
このケンゾーって男。
7歳の頃に日本からアメリカに移住したらしい。
もちろん、移住のきっかけは親の仕事で。
大手企業の会社の重役を務めるケンゾーの父親とは、あまり会っていないようだ。
日本には兄弟がいるらしいけど。
7歳のころから会ってないって噂。
そのへんはマスターも詳しく知らないようだった。
ケンゾーはケンゾーで、一人シカゴの隣町のミルウォーキーに越して来てしまったらしい。