「要ッ 要ッ! 降りたい~」
「あ?…ちょッ…」
何かに気づいた未央は、容赦なく俺の背中をバシバシと叩く。
バランスを崩しそうになって、思わず急ブレーキをかけた。
キキィーと甲高い音を上げて、自転車はその店の前で止まった。
「わー、かわいぃ……」
自転車の荷台から勢いよく降りた未央は、真っ直ぐにそこへ駆け寄った。
それは。
あのキャンディの店。
俺は、自転車を店の前に停めながら未央の様子を眺めた。
「こんなに素敵なお店があったんだ。 もっと早く連れて来てもらえばよかったな」
そう言いながら、今朝の猫のようにキラキラした顔をして振り返った。
あー……そういやまだ、未央をこの店に連れてきた事なかったなぁ。
そのキラキラな顔を見ながら、何となく微笑んでみる。
――あ。
あれ、どこやったっけ?
ほら、あのマスターがくれた……
ズボンのポケットに手を突っ込むと、指先に紙の感触。
「……忘れてた」
手をそっと広げると、それは。
マスターが俺にくれた苺味のキャンディだ。
「苺味」には、俺も未央も結構愛着が沸いてる。
それは、幼い頃の思い出なのか。
大事な味のような気がするんだ。



