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風の中を、不機嫌な俺と緩んだ口元を隠すのに必死の未央を乗せた自転車は、勢い良く坂道を下る。
そして大きな赤い橋の下をくぐった。
「要って、ほんとに猫ちゃん嫌いなんだね?」
「誰だってあるだろ、苦手なものの一つや二つ」
「でも、意外だな。 なんでも簡単にやってのけちゃうし、驚いた顔なんて見たことないから。 だから要には怖いものなんてないと思ってた」
「なにそれ」
呆れて溜息をつく。
そんなに余裕に見えてんだ、俺って。
じゃあ、お前のために必死になってたあの時期も。
きっと伝わってなかったんだろうな。
なんか、心外……
ミシガン湖付近の自宅から、自転車で約二十分。
ようやく馴染みの店が見えて来た。
季節は真夏。
どこからともなく聞こえてくる蝉の合唱が、賑やかな町により一層彩りを添えている。
容赦なく大地を照らす太陽は、ギラギラとアスファルトを焼く。
その熱が反射して、まるでグリルの中の魚の気分だ。
自転車で二人乗りをしてきた俺の額には、ジワリと汗が吹き出てくる。
「あち」
呟いて、Tシャツの襟元を人差指でグイッと引っ張る。
額だけじゃなくて、身体も汗びっしょりだ。
あー…シャワー浴びたい。



