「いいの?」
「別にー。 俺は居候の身だからね」
面倒臭そうに、チラリとネコに視線を送りながら言って、俺は未央とそのネコに背を向けた。
「要ッ ありがとうーッ!!」
パタパタと小さな足音をさせて、未央は俺の腕に飛びついてきた。
それと同時に、仔ネコのやわらかな毛の感触……
「ミャアァッ!」
「うわッ! いいから俺にはくっつくな!」
――バシッ!
…………。
あ……やば……
掴まれた腕を思い切り振り払い、行き場をなくした左手はなんとか俺の髪をワシャワシャといじる。
「ネ、ネコが……びっくりするし」
「…………」
妙な沈黙が流れる。
何度も瞬きを繰り返す大きな瞳。
その瞳の中に、得体の知れない嫌~な感じがするのは俺だけか?
そして、固まっていた未央の頬がふっと緩んだ。
「……要……もしかして、ネコ……苦手?」
「ばッ そ、そんなわけないじゃんッ」
「……そうなんだぁ、へ~え。 要でも苦手なモノあるんだぁ。 ぐふふ……なんか意外」
顔を背けた俺に、未央はなんとも楽しそうに覗き込んでくる。
「ぐふふって……お前ね」
「なんか、うれしぃー」
呆れ顔の俺を見て、頬をピンク色に染める未央。
なにが嬉しいんだよ。 こっちはちっとも嬉しくないっての。
ブツブツ文句を言いながら自転車を引く俺の周りを、ちょろちょろする未央はなぜかすごく楽しそうで。
ま、いいか……なんて思えてしまった。