心臓が、体中に一気に血が巡る。
ああ。
やっぱりもう、ダメです……。
「要の……ばかあぁぁああああッ!!!!」
――…結局。
あたしはこれからも、きっと。
ずーっとこうして気まぐれな要に、振り回されちゃうんだろう。
イジワル言って、あたしをからかったりするけど。
それって全部、要の照れ隠し。
わかってるんだよ?
あたしには、お見通しなの。
だから。
ちょっとエッチな事言っても、その後で要の頬が赤く染まってるのをあたしは見逃さない。
一瞬たりとも、要を見逃したりしたくない。
あの日。
花火の下で、あたしに指輪をくれた時みたいに
海で、あたしを命がけで救ってくれた時みたいに
もっと大切な思い出を作って行こうね?
同じ季節を過ごして。
そうしてあたし達は大人になっていくんだろう。
いつか、あたしと要に子供が出来たら。
絶対に教えてあげたい事がある。
パパとママはこの場所で、出会ったんだよって。
そして。
苺のキャンディを、君の小さな口に入れてあげよう。
「いい天気だな……」
ポケットに手を入れて空を仰ぐ要。
その瞳は空なんかより、もっともっと遠くを見ているようだった。
あたしはその背中から視線を落とすと。
左の薬指に、そっと誓いのキスを落とした。
――…未来は明るい。
いつまでも
大好きな人が笑っていられますように……。
要の隣で同じように空を見上げた。
真っ白な入道雲が、真っ青な空にどこまでの腕を伸ばしてる。
どこからともなく甘い香りと共に、季節はずれのピンクの欠片が頬を掠めた。
新しい居候生活が、またここからスタートする。
そして季節は巡り……。
また、春は来る。
優しい記憶と、甘酸っぱい苺の香りを連れて……。
fin.



