――トントン
階段を下りてくる足音が聞こえる。
「……ん……」
それでも要のキスは止まなくて。
……キスしてと言ったわりに。
ありとあらゆる術(すべ)を使って。
あたしの全てを奪っちゃうような、そんなキスを要はくれた。
息をつくヒマもなく、唇を合わせたあたし達。
「……んんっ…ふ…」
ああ……
だめ……それ以上は……。
止まらなくなる……。
――トントントン
……ガチャ
ほんの少しだけ開かれたリビングのドアから、メガネがキラリ。
「……未央ちゃん、今日はカレーだって」
「……え、あ……か、カレー? やったあ」
しどろもどろのあたし。
ギリギリで離れたあたし達は、もちろん何もなかったふり。
なんだ?これ……。
前にもこんなことが?
……デジャブ?



