「ほら」
「へ?」
楽しそうに目を細めた要は、少し顔を傾けて唇を寄せた。
「早くしてよ。 でないと、ずっとこのままだぜ? 未央ちゃん?」
「……なッ……」
なにそれーッ!
ぷっくりと熟れた唇。
なんだか甘い香りがする……。
ドキン ドキン
「なあ、待ってんだけど?」
「……ヤダ……」
ハスキーな低音が、脳内を刺激する。
甘酸っぱい香りに、なんだか目眩が起きる。
要は伏目がちにあたしを捕らえると、あたしの耳の後ろから髪をかきあげた。
ドクン ドクン
「親父が戻ってくるよ?」
「……い、イジワル……」
涙目になったあたしに、勝ち誇ったように鼻でフンと笑った要。
形勢逆転。
「……なんでだろ。 未央見てると、いじめたくなる」
掠れた声でそう囁いて。
要はそっとあたしに自分の唇を重ねた。



