今、なんて?
ポカンと口を開けたままのあたし。
要は、そんなあたしに1度だけ視線を落とすと、また遠くを眺めた。
「家……出るって……なんで……」
ユルユルと立ち上がったあたしに、要はポケットの中から何かを取り出して。
そしてそれをあたしの前に差し出した。
意味がわからずに、それを受けとって。
あたしの思考は停止してしまった。
え……
「こ、これ……」
それは、シルバーに輝く一本の鍵。
手の中にすっぽり納まるその鍵と、要の顔を交互に見やる。
その反応に要は「ぷ」って笑うと、木の幹に体を預けたまま、覗き込むようにあたしと向き合った。
ドキン
「一緒に住んじゃうか」
「……え……」
あたし達の周りだけ、すっごくゆっくりになってしまったような。
時間が止まったかと思った。



